トーステン・ロイブル氏クリニックレポート テーマ「オフボールスクリーン」~どのようにスクリーンでフリーなショットを創れるか~(寄稿:株式会社ERUTLUC 佐東雅幸氏)

こんにちは。株式会社ERUTLUC指導員の佐東雅幸です。今回、先輩指導員である池田親平さんの指名を受け、私が、トーステン・ロイブル氏のクリニックレポートを書かせて頂きました(図解、説明 制作協力 GSL:片岡)。

現在、千葉県の私立我孫子二階堂高校に非常勤講師として勤務し、男子バスケットボール部A・コーチとして指導もしております。今回のテーマの直接でのディスカッションを含め、是非、たくさんの高校との練習試合、合同練習をさせていただき、お互いにプレイヤーもコーチも学び合える機会を作れたらと思います。ご興味ある方がおりましたら、ぜひ、ご連絡の程、宜しくお願いします!

はじめに:トーステン氏が考える疑問

  • 各チームで優れたシューターが多いが、活かしきれてないのでは?
  • 打たされたシュートなど、受動的な場面で打っていませんか?
  • シューターが気持ちよく打てる場面を作れていますか?

目次

  1. How to ( ①set/②use )
  2. Footwork(ウォーミングアップでできるフットワーク)
  3. Decision making
  4. 練習の組み立て方
  5. トーステン氏の考える日本の課題

1.How to ( ①set/②use )

スクリナーとユーザーのポイントを意識して、まずは簡単にディフェンスからファイトオーバーされないこと。そのためにはskin to skin で肌と肌をつけるようにブラッシングすることを強調していました。

①setのポイント

スクリナーはオフェンスを見つけるよりもディフェンスを見つける

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  • 初歩的なミスとして、オフェンスに対してスクリーンをセットしてしまうケースがある。(写真右上)。そうすると、簡単にディフェンスに守られてしまう。
  • 基本的な事だが、ディフェンスに対して(X3)に対してスクリーンをセットする事が大切。その後、ユーザーがマークマンを誘導し、上手くスクリーンを使用する。

スクリナーの仕事はディフェンスの壁となること。味方(ユーザー)を行かせたい方向に背中を向けることで角度を決め、ディフェンスの位置(ディナイ、ヘルプ)でどこにセットするかを決める、と言う事です。

味方のボールマンに片方のこぶしを拳上し、見せる(パスを出してはいけない合図)

スクリナーの手は下げてセットする(トーステン氏の経験上、審判に胸の前でクロスをしてセットすることでファールを吹かれることが多かったため)

②useのポイント

  1. 肌と肌をつける(ブラッシング)
  2. ブラッシング側の腕は下げて、もう一方はターゲットハンドで上げる
  3. ディフェンスの位置を特定するために、肩から観る(※スクリーンを使う際に、肩から観ることでビジョンを確保することが目的。肩から観ることで広い視野を保つことになり、ディフェンスがどのように動いてくるか判断することもできる)

2.Footwork(ウォーミングアップでできるフットワーク)

①2on0+1 ( +1はディフェンスをつけないパサーとして)

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  • 1が2のスクリーンをブラッシングをし、ボールを貰ってシュート
  • スクリナーの2が3をブラッシングし、ボールを貰ってシュート
  • 1は自分でリバウンドをして、パサーへボールを戻す。その後、
  • スクリーンをセット。3が1をブラッシングしてボールを貰ってシュート。
  • 上記のサイクルでスクリーンのドリルを続ける。
  • 左下:ハイポスト、ミッドポスト、ローポストのいずれの場所でもOK。
  • チームの戦術に応じてセットする位置を変える。

②2on2+1 dummy defense

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  • ディフェンスがヒットすれば、ストレートで貰う(左上)
  • ディフェンスが後ろから追ってくる場合は、カールをする(右上)
  • ディフェンスがスライドで守ったらフレアをする
  • マークマンをスクリナーに当てる事に成功した場面でもカールカットをしてしまうと、ディフェンスに守られてしまう

ストレートのポイント

  • 上記のuseのポイントを参照

カールのポイント

  • 内側の腕をスクリナーの腰回りを潜り込むようにくっつけながら回り込む
  • ユーザーの胸を目掛けた正確なパスを心掛ける

フレアーのポイント

  • クロスステップで早い広がりとビジョンの確保
  • オーバーヘッドで高いパスをする

3.Decision making

①3on3 Give & screen

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  • 1がどちらかにパス。その後、ダウンスクリーンをセット。3がブラッシング後、スクリナーの1は中へカット
  • 1がボールを貰えない場合、3へパス。すぐにフロアバランスを考えて拡がる。
  • 最初と同じ要領でパスをし、ダウンスクリーンをセット。3選手の全員がスクリーンをセットし終わったら、その後はフリーとする。グッドシュートを意識してフリーオフェンスを行う。

②Decision making

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ディフェンスの状況

  1. スクリーンにヒット(引っ掛かる)
    →ストレート(ユーザー)中へカット(スクリナー)
  2. 背後からついてくる
    →カール(ユーザー)ホップアウト(スクリナー)
  3. スライドでパッシングライン以上の位置にいる
    →フレアー(ユーザー)中へカット(スクリナー)
  4. ショー&リカバー
    →ホップアウト(ユーザー)スプリットカット(スクリナー)

③3on3+1 ~ 4on4 Staggered screens

ルールを無視し続けると不自由なバスケットになる

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  • 1が2の方向で向かうフェイクをしながら、4のスクリーンを利用してウィングの位置へ移動する。
  • 5は2へのスクリーンをセット。最初のスクリナーの4も2に対してダウンスクリーンをセットする。このようなスクリーンをStaggered screenと呼ぶ。
  • 2枚目のスクリナーは、ユーザーである2の動きに合わせ、一瞬のタイミングで素早く動いてディフェンスのレーンをふさぐ(step,step)。
    ※様々な考え方があるが、試合中にムービングスクリーンでオフェンスファールのコールが鳴らないようなソフトなスクリーンではいけない。ファールを推奨するわけではないが、スクリーンを正しい姿勢でハードに素早くセットする。トーステン氏の場合、腕を胸部分でクロスする姿勢ではなく、手を下に伸ばし、こぶしを重ねる方法を推奨。
  • また、スクリナーは、ユーザーにシュートを打たせたい2歩前でセットする事が大切(左下、塗りつぶし部分を参照)。

このような形式的な練習をすると、選手の自主性と、オフェンスのルールとの両立が難しい。ルールを無視し続けると、カオスとなり、不自由なバスケットになる。(カオスとは、無秩序、混沌などのこと示す。)。かといって、規則で選手を縛り、型にはめるとプレイヤーはロボットになってしまう。

コーチはプレイヤーに対して明確な指針を設ける事が必要。トーステン氏の考えでは、BREAK OUT(ルールを破るときの判断基準)として’80% SCORING CHANCE‘という考えを伝えている。80%の確率で得点が出来ると選手が判断した際、選手の自主性に任せている。また、同時に、具体例として、どういうときにBREAK OUTすべきなのかをプレイヤーに伝えることが大切。

※上記のオフェンスシステムでも、1が4のスクリーンを使ってウィングに行った際、トップへワンハンドパスをするフェイクをして、そのままベースラインへドライブをするオプションも存在する。

④5on5 HORNS

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  • ボールマンに対して2枚のスクリーンをセット。
  • 1は4のスクリーンを利用して、マークマンのディフェンスラインを下げる。それを利用して5のスクリーンをスムーズに使う。
  • 1がウィングへ移動する間に、4が2に対してダウンスクリーン。その後、連続する形で5もダウンスクリーンをセット。Staggered screensの時と同じ形式と考え方。
  • トップへ上がってきた2へパス。狙えるようであればシュートを狙う。その後、3に対して4と5が図のようにスクリーンをセット。この際も、2枚目のスクリナーは正しい姿勢を保持した上で、ディフェンスのコースに対して素早く動いて(ステップ、ステップ)、激しいスクリーンをセットする。
    ※繰り返しになるが、動くタイミングが遅れるとムービングスクリーンでオフェンスファールになる。ただし、試合中にムービングスクリーンを吹かれないようなソフトなスクリーンでは実践的ではない。実用的なスクリーンとなるように積極的にトライする事。

⑤エンドラインのナンバープレー(BOB)

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  • 図のようにセットする。シューターは2番、インサイドアタックが得意な選手を5の位置に配置。
  • 4にパスを出す。2はパサーの5のディフェンスに対してスクリーンをセット。3は1へダウンスクリーンをし、4から1へパス。
  • 2のスクリーンを利用し、5はインサイドでシールをする。その隙に、4は2のディフェンス(またはスイッチをした5のディフェンス)に対してダウンスクリーンをセット。1からシューターの2へ対してパスをする。

4.練習の組み立て方の順序

  1. 2on0+1
  2. 2on2+1
  3. 3on3
  4. 3on3+1
  5. 4on4
  6. 5on5

原則として、5on0からいきなり5on5へと移行すると、ハイレベルな選手でも混乱が生じやすく、上手くいかないケースが多い。ヨーロッパの上級コーチをはじめ、NBAでも多くの3on3、4on4の練習を取り入れ、基本はこの組み立て方を実践しているようです。

筆者の私見ですが、5on0は「オフェンスの型を確認する」、「動きのタイミングを確認する」セットオフェンスの構築には有効だと考えます。ここから5on5にいきなり移ってしまうことで、型の通りにいかないときや型から外れたプレーのときにカオス(混沌)な状態が生まれやすく、選手の成功体験に繋がらないのではないかと考えます。なので、このトーステン氏の組み立て方の順序は、自分の中にスッと入ってきました。

5.トーステンの考える日本の課題(ヨーロッパとの比較をして)

  1. vision:スクリーンをかけるディフェンスを見つける
  2. make contact:接触を恐れない
  3. patience:速く、速くと焦らず、忍耐強く

この記事の著者

佐東 雅幸
1990年生まれ。中学校でバスケットボール部に入部し、情熱あふれる恩師に出会い、高校は日本大学山形高等学校に進学し、バスケットボールに熱中する。大学からはバスケットボールの家庭教師ERUTLUCとの出会いを通じて、バスケットボールのコーチとして指導をスタート。私立我孫子二階堂高等学校でアシスタントコーチとして活動の経験を得て、現在は、エルトラックの活動を中心に平日は、高校の部活への出張指導、土日の夜は小中学生を対象に、「なりうる最高の自分を目指す環境を提供する」ことを心がけてバスケットボールの指導を行っている。