ゾーンオフェンス(ゾーンアタック)に生きる2つのコンセプト

アメリカ、ウエストバージニア大学にてコーチング修行中の森コーチ(@ta__mori)より寄稿頂きました。今回は、ゾーンオフェンス(ゾーンアタック・ゾーンディフェンスに対する攻め方のこと)に生きる2つのコンセプトを紹介したいと思います。

1.真ん中のディフェンスをシールしろ

真ん中のディフェンスをシール(ダックイン)することで、

  1. スクリーンの役目を果たす
  2. もし自分に向かってドライブしてきたときに、真ん中の背の高いプレイヤーがヘルプにいけないようにする
  3. リバウンドポジションを確保できる

という効果が期待できます。

特に1つ目の「スクリーンの役目を果たす」は見逃されがちですが、非常に重要なポイントになります。2つの動画を元に、実際どのようにこのコンセプトが使われているか見てみましょう(後で説明を加えるもの以外も非常に参考になるものばかりなので、最後まで動画を見ていただくことをお勧めします)。

一番初めのStack split は、2枚セットしたスタックのうち1枚が真ん中をシールすることでスクリーンの役目を果たし、見事にゴール下のシュートを作っています。

これも最初にとりあげられている、 Push Base in でこのコンセプトが用いられています。どちらのオフェンスも、ゴール下でのショットが生まれている点が最大の魅力になります。この2つはここぞという時のフォーメーションとして持っていてもかなり効果的です。

ところで2つ目に紹介した、Push Base in では、もう一つのコンセプトも同時に用いられています。それは

2.下側のプレイヤーを上げさせろ

です。ボールを素早くスイングさせることで、下側のプレイヤーをうまく上げさせることに成功しています。特に2-3に対しては、下側のプレイヤーが上に上がることでローポストからショートコーナーのスペースが広く空きます。このスペースをうまく活用すると、動画の Push Base in のようにゴールに近い位置でのオープンショットが作り出せます。

これらのコンセプトは相手が2-3の時だけでなく、3-2や1-3-1が相手の時でも応用できます。例えば相手が3-2の時はウィークサイド側の下側のディフェンスを真ん中のディフェンスと考えます。従って、「ウィークサイド側の下側(真ん中)のディフェンス」をシールし、ボールサイド側の「下側のプレイヤーを上げさせ」ればいいわけです。

例えば以下のようにセットし、

ゾーンアタック01

ダブルスタックから

ゾーンアタック2

ドリブルでトップのディフェンスを引きつけた後、ボールをスイング。ドリブル開始と同時にウイングプレイヤーはスイングを開始します。

ゾーンアタック3

スイングプレイヤーがダブルスタックを通過したら、すぐさま1人が逆サイドのディフェンスをシール。1人がゴール下にポジションを取ります。スイングしてきたウイングプレイヤーにパス。ボールサイドのディフェンスが出てこなければそのままシュートを打ちます。

ゾーンアタック4

ディフェンスが出てきたらフリーのゴール下にすぐさまパス。ゴール下のワイドオープンショットができます。

相手が1-3-1の場合は、「2-3の下側のディフェンスがすでに上がったもの」と考えます。従って「下側のディフェンスを上げさせろ」はすでに達成されているため、やるべきは「真ん中をシールしろ」になります。例えば

ゾーンアタック5

このようにセットし

ゾーンアタック6

ボールを逆サイドにパスします。パスと同時にローポストプレイヤーはスイングを開始します。またボールマンはキャッチと同時にエルボーに向けてドリブルを開始します。同時にダブルスタックのうち1人が真ん中をシール、1人がゴール下にポジションを取ります。この時ゴール下にパスができればゴール下でのワイドオープンショットの完成です。

ゾーンアタック7

もしこのようにパスコースをふさがれても、スイングしたプレイヤーを経由することでゴール下のショットが作れます。もちろんスイングしたプレイヤーがシュートを打ってもOKです。

このように、

  • 真ん中のディフェンスをシールしろ
  • 下側のプレイヤーを上げさせろ

の2つのコンセプトを用いることで、最も確率の高いゴール下のオープンショットを作り出すことができます。今回例として出した形でなくとも、この2つのコンセプトを満たせれば形は何でもOKです。

ハイポストとショートコーナーを用いたギャップアタック、オフボールスクリーン、オンボールスクリーンなど多岐に渡るゾーンオフェンスですが、一つの考え方として活用いただければと思います。

■追記

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【図解】ボールスクリーン・モーションオフェンス

 

   

この記事の著者

森 高大
1989年生まれ、香川県出身。香東中学校-高松高校-東京大学-ウェストバージニア大学大学院アスレティックコーチング専攻。小学校からバスケを始め、大学3年次までプレイヤー4年次には学生コーチと主務を兼任しながら、株式会社Erutlucで小中学生の指導にあたる。現在はアメリカDivision I 所属のウェストバージニア大学大学院でコーチングを専攻しながら、男子バスケ部でマネージャーとして活動中。
コーチMのブログ http://ameblo.jp/tamorimorimori83/